北海道英語教育学会会長:片桐 徳昭
(北海道教育大学)
この度北海道英語教育学会長を拝命することとなりました、北海道教育大学の片桐德昭(のりあき)と申します。なぜこの人が会長にと驚かれた方も多いと想像したしますが、私もその1人です。公立高校で英語を教えながら社会人学生として大学院で学び、英語で英語の授業を行う方策を研究して20年近くが経ちました。ひっそりと研究を続けていこうと思っていた矢先、いきなり幕が上げられた感じで、かなり狼狽しているというのが本心です。
さて、私が研究を始めた当時は「英語が使える日本人」構想や小学校英語導入で激論が交わされていましたが、時代は大きく変わり、英語を就学前も含めた初等教育から教えることが珍しくなくなりました。生徒たちが学ぶ英語の量や質も増大してきました。特に現行学習指導要領から、中等教育前半終了までに学ぶべき量の増大は英単語だけでも実質2倍となり、英語教育の課題として大きな影を落とし始めています。また、文部科学省の「英語教育実施状況調査」の結果についても中高3年生の英語力は目標に届かずとの報道は毎春先には我々にとって耳の痛い話のひとつです。しかし、福井県とさいたま市が毎年のように群を抜いた目標達成率を上げている地域が存在することも事実であり、そこから学ぶべきことは多いと思います。では、我々はどうしたら良いのでしょうか? 先日新聞の声欄で読んだ中学生(13歳)の投稿の内容が大きく示唆に富むものだと感じました。増富さんは5年ぶりに会ったアメリカの友人と会話した際、「...(5年前は)英語が話せなかったので、スマートフォンで翻訳した英文を見せたりして、やり取りした。今回は口頭で会話できた。文法や単語に間違いもあっただろうが、確実に言えるのは『翻訳に頼るより、実際に話したほうが楽しい』ということだ。直接話すことで、自分の気持ちを込めたり、リアクションを交えたりできて、とても盛り上がる。あの雰囲気を言葉で表すのは難しいが、とにかく会話できるのはとても楽しい。今まで英語を勉強するのは『受験や将来の仕事のため』としか考えられなかったが、『外国人と楽しくコミュニケーションするために英語を学ぶんだ』と気づいた。」[朝日新聞2024-04-02,増富文香 中学生(東京都 13)より抜粋] もし、数値目標達成のためにだけに英語教育を行なってしまったとしたら、意思伝達としての英語という言語の本質を見逃してしまうことになるかもしれません。 HELESの活動を通じまして、広い意味で英語学習・教育の楽しさを会員の皆様と共有できることを楽しみにしております。どうぞよろしくお願いいたします。