北海道英語教育学会第25回研究大会

ご案内

2024年7月2日

北海道英語教育学会 会長 片桐 徳昭

初夏の候、会員の皆様におかれましては、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。

この度、本学会では下記の通り第25回研究大会を実施させていただくこととなりました。本年は、LA研究、特に「タスク中心言語指導研究」「ライティングにおけるフィードバック研究」などの分野において国際的にも幅広くご活躍の新谷奈津子先生(関西大学大学院外国語教育学研究科教授)をお招きし、「タスクで変わる英語授業:第二言語習得理論に基づく効果的な指導法」と題してご講演賜る予定でございます。また、本大会の研究発表者を下記の要領で募集させていただきます。多くの先生方や学生の皆様方のご発表、ご参加賜りますようお願い申し上げます。

なお、大会情報は本学会ホームページ及びメーリングリストにて随時ご案内させていただきますので、そちらもあわせてご高覧ください。

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開催要項

主催:北海道英語教育学会

日時:2024年10月20日(日) 12:30〜17:00

会場:北海学園大学8号館

(札幌市豊平区旭町4丁目1-40:地下鉄東豊線「学園前」下車3番出口直結)

発表時間:1件30分(発表20分、質疑5分、移動5分)

参加費:会員 無料

非会員(資料代として) 一般 1,000円、大学院生 500円

学部生 無料

懇親会:ご参加をご希望される方は下記の大会参加申込からお申込みください

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大会要項ダウンロード

大会要項は下記のボタンからダウンロードできます。

講師の写真

特別講演

演  題:「タスクで変わる英語授業:第二言語習得理論に基づく効果的な指導法」

講  師:新谷 奈津子 氏(関西大学大学院外国語教育学研究科教授)

講演概要:本講演では、実践的なコミュニケーション能力の育成を目指したタスクベースの言語指導法について詳しく解説します。まず、第二言語習得理論の観点から、コミュニケーションを通した学習の重要性を説明します。次に、学校種別や学習者のレベルに応じたタスクの作成方法を、具体的な事例を交えながら紹介します。また、タスクベース指導法とタスクサポート指導法の違い、およびそれぞれの特徴や適用場面について紹介します。さらに、タスクをコミュニケーション能力評価のツールとして活用する方法について議論します。この講演を通じて、「タスクとは何か」「タスクがコミュニケーション能力の育成にどのように役立つのか」「実際の教育現場でどのように導入すればよいか」といった疑問に少しでもお答えできれば幸いです。

講師略歴:関西大学 外国語教育研究科・外国語学部 教授。専門は第二言語習得、特にタスクベースの言語教育、第二言語ライティング、第二言語での語用論的知識の発達、明示的・暗示的文法知識など。Studies in Second Language Acquisition、Language Learning、TESOL Quarterly、Applied Linguisticsなどの国際ジャーナルに研究論文を多数発表している。単著にThe role of input-based tasks in foreign language instruction for young learners (John Benjamins)、共著にTask-based language teaching: Theory and practice(Cambridge University Press) などがある。外国語教育研究科では、タスクベースの指導法をはじめ、第二言語習得分野における様々な研究テーマで博士論文・修士論文の指導を行っている。趣味は2匹の猫の相手とテニス。

特別講演ハンドアウト
(11月30日(土)までDL可)

当日参加した方のみダウンロードが可能です。大会事務局から11月11日までにメールでパスワードが送られますのでしばらくお待ちください。

日程

12:00-12:30 受付
12:30-12:50 開会式・総会
12:00-17:00 展示見学
13:00-13:30 研究発表・実践報告①〜④
研究発表①
「公立小学校3年生の英語の文字に関する知識の実態調査―英語の文字指導パッケージ開発のための基礎資料として―」
沢田 早生(網走市立潮見小学校)・佐藤 弘美(札幌市立星置東小学校)・平山 伸正(札幌市立宮の森小学校)・内野 駿介(北海道教育大学札幌校)
 E公立小学校2校の3年生に対し、英語の文字の形態と名称に関する知識を調査した。英語の文字として正しいものを選択する課題1、聞いた音が英語の文字の名称として正しいかどうかを判断する課題2、聞いた音と対応する文字を選択する課題3、提示された文字の読み方をひらがな又はかたかなで表記する課題4を実施した。A校の児童44名を対象とした分析の結果、以下のことが分かった。(a)各課題の全体正答率はそれぞれ96.3%, 67.3%, 86.9%, 72.0%であった。(b) 各課題の全体正答率に基づくクラスター分析の結果、全課題で正答率が高い文字 (B,K, Sなど)、課題1, 3, 4の正答率が高く、課題2の正答率が低い文字 (A, C, Oなど)、課題1の正答率に関わらず、課題2, 3の正答率が高く、課題4の正答率が低い文字 (F, G, Hなど)、課題1以外の3つの課題の正答率が低い文字 (R, V, Zなど) に分類された。当日はB校の調査結果を含めた分析結果を報告する。
研究発表②
「持続可能な小中連携を目指して―Can-Doリストを活用した連携試案―」
阿部 巧(宇都宮共和大学)
 小中連携の重要性は、これまで多くの研究者によって提唱されており、文部科学省も好事例を集めた事例集を作成している。しかし、先行研究を整理すると、教育課程の特例措置や加配教員、支援員、さらには小中連携を推進するための特別委員会など、地域特有のリソースに依存した事例が多く報告されており、これらの取り組みを一般化することは難しい現状がある。さらに、これらのケースでは、教育課程の特例が終了したり、中心となる担当者が異動などで不在になると、連携の継続が困難になる場合も少なくない。こうした背景から、筆者は持続可能な連携の在り方を考えることが重要だと考え、既存のリソース活用した連携の試案を提案する。
研究発表③
「教科書本文活用スキット発表によるタスク性と成果物の影響」
楠本 正義(札幌市立あいの里東中学校)
 本研究では、小学校で「話すこと(発表)」を中心として言語活動に取り組んできた中学校1年生を対象に、授業内に教科書を利用したスキット(寸劇)発表が、言語習得に及ぼす効果を検証した。山下他(2024)のタスク性分析基準を参考に指導を行い、特に、「Outcome」(成果物の作成と提出)に着目し、その有無がコミュニケーションスキルと学習効果に与える影響を分析した。具体的には、教科書内容の理解と語彙指導において、即興的なインタラクションや自分事として捉えられるような発問などを取り入れた。そして、スキット原稿の作成と提出においてのみ義務付けたグループと、義務付けなかったグループを比較した。
研究発表④
「Initiatives in Teaching in English for Faculty and Staff Development at Hokkaido University」
太田 とも美(北海道大学)・Mazur Michal Maciej(北海道大学)
 At Hokkaido University, concerted efforts to bolster English instruction among faculty and staff have ledto the development of comprehensive programs focusing on enhancing language skills, teaching competencies, and intercultural communication. These initiatives are structured around a series of seminars and workshops designed to address the unique challenges posed by teaching in a globalized academic environment. The programs target not only the linguistic aspects of English instruction but also pedagogical techniques that foster an inclusive and effective learning atmosphere. Qualitative and quantitative feedback from participants, gathered through post-workshop surveys, indicates a positive impact on their professional capabilities and confidence in handling diverse classroom settings. This feedback is crucial for ongoing program refinement and informs continuous improvement strategies. Discussing these results, we formulate recommendations for advancing English teaching in higher education, and future efforts to enhance pedagogical effectiveness and intercultural competence across the academic community.
13:35-14:05 研究発表・実践報告⑤〜⑧
研究発表⑤
「令和6年度版小学校外国語科検定教科書付属絵辞書の語彙分析」
内野 駿介(北海道教育大学)・佐藤選(東京学芸大学)
 令和6年度版小学校外国語科検定教科書付属絵辞書及びそれに類する巻末の付属資料にイラストが掲載されている語句を調査した。分析の結果、以下のことがわかった。(a) 総異なり語数は1,289語であった。品詞ごとに見ると、最も多いのが名詞 (966語, 73.9%) であり、次いで動詞 (192語, 14.7%)、形容詞 (91語, 7.0%) の順に多かった。(b) 掲載社数で見ると、最も多いのは6社中1社でしか掲載されていない語 (465語, 36.1%) であり、次いで多いのは6社中5社で掲載されている語 (219語, 17.0%) であった。6社全てで掲載されている語は147語であり、全体の11.4%であった。(c) (b)の傾向には品詞ごとに違いが見られた。例えば形容詞は6社中5社で掲載されている語が最も多かった(91語中38語, 41.8%)。名詞は966語中137語 (14.2%) が6社全てで掲載されており、その割合は全品詞中最も高かった。
研究発表⑥
「Can-Doリストの活用を軸とした中学校教員向けオンライン研修プロクラム成果と課題」
根岸 清人(苫小牧市立明野中学校)・阿部 巧(宇都宮共和大学)
 本研究は、中学校の英語教育において、Can-Doリストを活用した授業実践と、それに対応した教員向けオンライン研修プログラムの開発およびその効果検証を目的とするものである。すでに小学校で成果を得られたCan-Doリストを活用した授業実践を基に、その効果を引き出すための研修プログラムを開発し、教員がその実践をより効果的に行えるよう支援することを目指している。さらに、この研修プログラムを通じて、小学校で得られた成果と同等の成果を中学校でも達成できるかを検証する。2年間にわたる検証結果を基に、今後の中学校英語教育におけるCan-Doリストを活用した実践の有効性や、さらなる応用可能性についても考察を行う。
研究発表⑦
「中学校におけるタスクを志向した英語授業開発」
村田 琴美(札幌市立丘珠中学校)・志村 昭暢(北海道教育大学)
 中学校学習指導要領外国語編 (2017) における話すこと[やり取り]の目標として、「関心のある事柄について、簡単な語句や文を用いて即興的で伝え合うことができるようにすること」が挙げられており、実際のコミュニケーション場面で不可欠である即興的に英語を使用する能力の育成が重要であると考えられる。それらを解決するために、タスクを重視した指導が注目されており (松村編, 2017 など)、さらには学習者の思考力・判断力・表現力の育成のためにもタスクを用いることが重要であることも指摘されている (高杉, 2024)。本発表では、中学校英語授業においてタスクを志向した授業を開発・実践し、授業分析の手法であるCOLTを用いてその特徴を明らかにする。
研究発表⑧
「小学校高学年外国語科の授業における「教師の発話」分析―1年間の授業改善に焦点を当てて―」
平山 伸正(札幌市立宮の森小学校)
 実践者である「私」が、公立小学校高学年外国語科の授業において、自らの発話の実態を調査した。書き起こしから5年生と6年生の単元1時間目の授業について、①ユニットごとにL2(英語)・L1(日本語)・L1 / L2 に分類し、その言語使用量と割合、また②ユニットごとの語数を数え、平均値及び割合を算出した。さらに③L1使用を言語機能に分類し、割合を算出した。その結果、5年生と6年生はそれぞれL2使用率が69.2%, 64.2%、L1使用率は27.9%, 32.4%であった。想定よりもL1使用率が高いことから、L2の発話長や形式及びL1の言語機能について分析した結果、目標言語項目の習得に焦点を当てているという授業であるとの特徴が浮かび上がってきた。当日はL2の言語機能の割合との比較を通して、L1使用とL2使用のそれぞれの役割を分析し、1年間の授業の変化について言及する。
14:10-14:40 研究発表・実践報告⑨〜⑪
研究発表⑨
「小学校外国語科検定教科書付属絵辞書のイラストから大学生はどの程度単語を想起できるか―形容詞に焦点を当てて―」
佐藤 選(東京学芸大学)・内野 駿介(北海道教育大学)
 2つの国立大学の学生計209名に対し、小学校外国語科検定教科書付属絵辞書に収録されている形容詞36語について、絵辞書で使用されているイラストを見てその意味を答える調査を行った。各語3~4枚のイラスト、計110問を出題した。正答率、誤答率、わからないと回答した参加者の割合に基づく分析の結果、以下のことが分かった。(a) 全体の正答率は41.9%、誤答率は38.7%、わからないと回答した参加者の割合は19.5%であった。(b) 正答率は単語により大きく異なり、正答率が特に高い語はhungry, sleepy, sad等、特に低い語はwonderful, great,soft等であった。(c) クラスター分析の結果6クラスターに分類され、各クラスターに特徴が見られた。そのほか、教科書出版社ごとの正答率分析や、イラストごとの誤答分析を行った。
研究発表⑩
「「主体的に学習に取り組む態度」の評価の現状」
中村 洋(小樽市立望洋台中学校)
 2020年度から小学校で、2021年度からは中学校で新しい学習指導要領が実施され、各教科の目標が、「教科における活動を通して、資質・能力を次のとおり育成することを目指すこと」に統一された。また、児童生徒が主体的に学ぶことができる指導や学習環境の整備することも求められた。しかし、中教審の「児童生徒の学習評価の在り方(報告)」でも、学校現場の現状として、評価の面において、「関心・意欲・態度」の観点で、今なお授業での挙手の回数やノートを取っているかなど、一時的に表出された形式的な評価しか行われていないことも指摘されている。本研究では、この点に着目し、「主体的に学習に取り組む態度」を、現場の教員はどのように評価を行っているのかを考察していく。
研究発表⑪
「論理・表現Ⅱの教科書間におけるスピーキング活動のタスク性の違いについて」
山下 純一(函館工業高等専門学校)・臼田悦之(函館工業高等専門学校)・村田琴美(札幌市立丘珠中学校)・志村昭暢(北海道教育大学)・小野祥康(北海道科学大学)・照山秀一(札幌学院大学)・酒井優子(東海大学)・三澤康英(札幌龍谷学園高等学校)・中村洋(小樽市立望洋台中学校)・遠藤香菜子(米子工業高等専門学校)・中山穂乃花(北海道遠軽高等学校)
 山下他(2023)では、論理・表現Ⅰに掲載されているスピーキング活動のタスク性分析を行った。その結果、タスク性が高い教科書と低い教科書に分かれることがわかった。また、タスク性が高い活動は中学校の学習内容をベースとして行われる発展的な活動(タスク性が高い活動)が中心となっていることがわかった。一方で、タスク性が低い教科書は、学び直し(一層の定着)が意識されていると考えられるパターンプラクティスなど(タスク性が低い活動)を行った後に、発展的な活動が行われるが多いということがわかった。本研究では、論理・表現Ⅱに掲載されているスピーキング活動のタスク性分析を行い、これらの傾向がどのように変わったかを発表する。
14:45-15:15 研究発表・実践報告⑫〜⑭
研究発表⑫
「Reconsidering the Effectiveness of Presentation-Practice-Production (PPP) based approach in the Japanese EFL contexts」
佐藤臨太郎(奈良教育大学)
 In Japan, the focus of EFL teaching has gradually shifted from a traditional emphasis on grammar mastery to the development of communicative competence, encouraging learners to acquire language skills through practical use. Task-based language Teaching (TBLT) has become a favored approach in this transition, often sidelining the Presentation-Practice-Production (PPP) method. However, I argue that PPP based approach retains significant value within the Japanese EFL context. In this presentation, I will explore the rationale behind this perspective. Additionally, I will invite active discussion on the relevance and application of the PPP approach in the context of Japanese EFL instruction, in comparison to other approaches such as TBLT. Let’s exchange our opinions and ideas!
研究発表⑬
「語彙学習におけるカタカナ語指導の効果の検討」
濱田 裕介(希望学園・北嶺中高等学校)
 現行学習指導要領において、小中高での導入すべき語彙数が増加した。そうした中で、いかに語彙を効果的・効率的に指導・学習するかは重要な問題である。本発表は、語彙指導の際に、学習者にカタカナ語の知識を与えることの効果を検討することを目的とした。教師が学習者に対し、カタカナ語の指導をおこなった場合とそうでない場合に語彙の想起・保持にどの程度の差があるのか、また、各語が持つ特性によってその効果にどの程度の差があるのかを確認することを通して、カタカナ語指導の重要性や教育的示唆を提示する。本発表は、パイロットスタディーであり、多くの先生方から研究デザインや方向性などに関するアドバイスを頂き、本調査へとつなげることができれば幸いである。
研究発表⑭
「MI理論を基にした令和6年度版小学校外国語科教科書の考察」
小野 祥康(北海道科学大学)・松橋晃輔(和寒町立和寒中学校)
 Gardner(1983; 1993; 1999)は、多重知能理論(Multiple Intelligences:以下、MI理論)として8つの知能(言語的知能、論理・数学的知能、音楽的知能、身体運動感覚的知能、視覚・空間的知能、対人的知能、内省的知能、博物学的知能)を挙げ、これらの知能特性を踏まえて指導方法を考えることにより、学習がより促進される可能性があると指摘している。本研究では、MI理論を基に、令和6年度版の小学校外国語科の複数の教科書における活動を分析した。その結果、先行研究と同様に、全般的に言語的知能、内省的知能、対人的知能を踏まえた活動が多くあることが分かった。また、5・6年生での違いや、令和2年度版との比較を通して見えてきた傾向についても報告する。
15:15-15:30 移動・休憩
15:30-17:10 特別公演
「タスクで変わる英語授業:第二言語習得理論に基づく効果的な指導法」
講師 新谷 奈津子 氏(関西大学外国語教育研究科・外国語学部 教授)
17:00-17:10 講演質疑応答
17:10-17:20 閉会
18:30-20:30 懇親会