北海道英語教育学会第26回研究大会 参加申込の御案内
ご案内
2025年9月11日
北海道英語教育学会 会長 片桐 徳昭
早涼の候、会員の皆様におかれましては益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。
このたび、本学会では下記の通り第26回研究大会を開催する運びとなりました。本年は21件の自由研究発表を予定しております。さらに基調講演として、立教大学異文化コミュニケーション学部・異文化コミュニケーション研究科の中田達也教授をお招きし、「英語定型表現の指導:コーパスと生成AIを活用して」と題してご講演を賜ります。 つきましては、大会要項をご確認のうえ、期日までにお申し込みくださいますようお願い申し上げます。多くの先生方ならびに学生の皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。 なお、今年度は例年を大きく上回る数の研究発表が寄せられたため、急遽午前10時より開始(受付は9時から、開会式は9時45分)とさせていただくことになりました。当初の予定から変更となりますことを、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
大会に関する最新情報は、本学会ホームページおよびメーリングリストにて随時ご案内いたしますので、併せてご覧ください。

開催要項
主催:北海道英語教育学会
日時:2025年10月5日(日) 10:00〜17:40
会場:北海学園大学8号館
(札幌市豊平区旭町4丁目1-40:地下鉄東豊線「学園前」下車3番出口直結)
発表時間:1件30分(発表20分、質疑10分、移動5分)
参加費:会員 無料
非会員(資料代として) 一般 1,000円、大学院生 500円
学部生 無料
懇親会:ご参加をご希望される方は下記の大会参加申込からお申込みください。
参加資格:どなたでも参加できます。本学会会員の皆様をはじめ、非会員の皆様におかれましても、英語教育に関わっている方、及び 興味・関心をお持ちの方は是非ご参加ください。

特別講演
演 題:「英語定型表現の指導:コーパスと生成AIを活用して」
講 師:中田 達也 氏(立教大学異文化コミュニケーション学部・異文化コミュニケーション研究科教授)
英語を学習する上で、比喩的イディオム (e.g., preach to the choir, pull the plug)、コロケーション (e.g., make a scene, wishful thinking)、二項表現 (e.g., high and dry, safe and sound)、句動詞 (e.g., show off, look up to) などの定型表現が重要な役割を果たすことがこれまでの研究により示されています。本講演では、まず定型表現が英語習得において果たす役割や定型表現の分類について論じ、英語定型表現に関する導入を行います。次に、定型表現の学習や指導において、コーパスと生成AIをどのように活用できるかを検討します。コーパスと生成AIそれぞれの利点と課題を整理した上で、両者を組み合わせることで定型表現に関するより有益な情報が得られる可能性を提案します。
講師略歴:立教大学異文化コミュニケーション学部および同大学院教授。専門は第二言語語彙習得。Studies in Second Language Acquisition, Language Learning, The Modern Language Journal, TESOL Quarterlyなどの国際ジャーナルに研究論文を多数発表している。外国語教育メディア学会学術賞、The Albert Valdman Award for Outstanding Publication, EUROCALL Research Awardなどを受賞。単著書籍に『英単語学習の科学』(研究社)、『英語定型表現の科学』(研究社)、『英語は決まり文句が8割今日から役立つ「定型表現」学習法』(講談社)、『最新の第二言語習得研究に基づく究極の英語学習法』(KADOKAWA) がある。あだ名は「なかたンゴ」。
日程
9:00-9:45 | 受付 |
9:45-9:55 | 開会式 |
10:00-17:00 | 展示見学 |
10:00-10:30 | 研究発表・実践報告①〜③ |
研究発表① | |
「オーセンティックなフィードバックは中学生の「聞き手意識」をどう変容させるか―ALTへの観光案内スピーキングタスク実践を通して―」 | |
楠本 正義(札幌市立あいの里東中学校) | |
中学校の英語スピーキング指導は、表現の暗記再生に留まるという課題がある。本実践では、中学2年生41名が、実在のALT(外国語指導助手)への観光案内というオーセンティックなタスクに取り組んだ。準備段階でALTから得たフィードバックを教師が指導に反映させ、本番での生徒のパフォーマンス変容を、発話の定性的・定量的分析を通して考察した。結果、高評価を得た生徒は、単に流暢なだけでなく、聞き手への配慮や、やり取りを維持・発展させる高い対話能力を示した。本稿は、オーセンティックな聞き手と目的志向のタスクが、学習者の「聞き手意識」を喚起し、真のコミュニケーション能力育成に繋がるプロセスを論じるものである。 | |
研究発表② | |
「英語科における道徳教育と国際理解教育の融合の可能性―中学校教科書の教材分析を通して―」 | |
中村 洋(小樽市立望洋台中学校) | |
本発表では、中学校英語教科書『サンシャイン』を教材分析の対象とし、英語科における道徳教育と国際理解教育の融合の可能性を検討した。教材には寛容や共感、協力、環境保護といった道徳的価値を含む題材が豊富に取り入れられており、言語活動を通じて価値観の内面化が促されることが確認できた。また、ディスカッションや自己表現活動などの指導法を工夫することで、生徒が他者の立場や意見を理解し、自らの考えを深める態度が育まれることも明らかとなった。本研究は、英語科の学習活動を通じて道徳的態度や国際理解を同時に育む可能性を示すものである。 | |
研究発表③ | |
「UDLに基づく授業が非英語専攻の学生の英語自己効力感に与える影響」 | |
沢谷 佑輔(北星学園大学) | |
近年、大学生の学力低下が懸念される中、特に非英語専攻の学生は英語への関心が低い可能性が高く、学習意識も多様であると指摘されている。さらに、障害をもつ学生の在籍率も上昇し、医師の診断の有無にかかわらず、学習上の困難を抱える学生が増加していることから、従来の一律的な指導では多くの学生にとって学びにくさが生じていると考えられる。また、英語の習熟度の低い学習者は、自己効力感の不足が顕著であり、その改善が効果的な指導の鍵となることが先行研究でも示されてきている。そのため、本研究では、大学共通科目の英語の授業において、「学びのユニバーサルデザイン(UDL)」の枠組みを導入することで、学生の英語学習に対する自己効力感にどのような影響があるかを調査する。 | |
10:35-11:05 | 研究発表・実践報告④〜⑥ |
研究発表④ | |
「ミニ・ティーチャーがもたらす学習エンゲージメントの向上―定時制高校におけるゲーミフィケーション実践の報告―」 | |
横倉 悠人(北海道北見北斗高等学校定時制課程) | |
「協働的な学び」を実現するうえで、様々な困り感を抱える生徒にどのように対応するかは、大きな課題のひとつです。そこで本実践では、各グループに「ミニ・ティーチャー」と呼ばれるファシリテーターを配置し、授業中に生徒が抱える困難を、ピアを通じて解決できる仕組みを構築しました。また、各グループには小説『ハリー・ポッター』に登場する寮の名前を付け、望ましい行動にはポイントを付与し、競争とゲームの要素も取り入れました。本発表では、これらの取り組みを通じて生徒のエンゲージメントがどのように変化したか、そして生徒自身がこの制度をどのように評価したかを、定時制高校の現場から報告いたします。 | |
研究発表⑤ | |
「AI支援ツールTransableを用いた英語ライティング支援と学習の広がりに関する一考察」 | |
小野 祥康(北海道科学大学)・青木 千加子(北海学園大学)・三ツ木 真実(小樽商科大学)・酒井 優子(東海大学)・濱田 裕介(希望学園北嶺中高等学校)・三澤 康英(札幌龍谷学園高等学校) | |
本研究は、英語ライティングにおけるAI支援ツールTransableの活用が、学習者の表現や思考にどのような影響を与えるかを探る探索的実践である。2名の大学生を対象に、個人で英作文を行った後、Transableからの助言を参考に文章を再構成した。AIによる支援が、文章の構成や語彙使用を促す様子が観察された。また、実施過程において生じた学習者同士の対話を契機に、さらに文章を書き直す動きが見られ、新たな視点やアイディアが取り入れられる様子も確認された。こうしたプロセスは、大学での英語ライティング指導のみならず、中学校や高等学校においても、論理的構成や説得力のある表現の育成を促す実践としても活用が期待される。 | |
研究発表⑥ | |
「大学生の英語ライティング課題での生成AIと翻訳AI使い分けの実態―学生の主体的活用と授業上の指導留意点の検討―」 | |
太田 とも美(北海道教育大学) | |
近年の教育では、「何を教えたか」ではなく「学生が何をどのように学んだか」に重点が置かれている。特に言語教育では学習過程の観察が重要である。しかし生成AIの台頭により、学生の思考や試行の機会が減る可能性が指摘されている。本研究では、大学1年生の必修英語講義におけるライティング課題での生成AIと翻訳AIの活用実態を明らかにすることを目的とした。調査の結果、学生は目的に応じて両ツールを使い分け、英語力向上に合わせて活用方法を調整していた。また、AI利用が学修スタイルや自己認識に与える影響や、授業内でのAI利用への留意事項も考察する。これらよりAI時代の英語ライティング指導の課題と可能性を提示する。 | |
11:10-11:40 | 研究発表・実践報告⑦〜⑨ |
研究発表⑦ | |
「中学1年生が1秒以上間を空けずに20往復の高速やり取りをする。」 | |
加藤 心(士幌町立 士幌町中央中学校) | |
本研究は、日本での英語指導において、英語学習歴1年の中学1年生が母語である日本語の翻訳を介さずに高速で英語を処理できるのかを検証する目的で行われた。指導法は、「聞く」と「話す」を同時に指導する指導法(通称、TOSS型英会話)である。日本語を介するひまのないほどの高速の目安として、2分間の英会話テストの中で1秒以上間を空けずに何往復もやり取りを継続できるかを調査した。その結果、ALTと1対1の英会話テストにおいて、授業を継続して受けた全ての中学1年生が、1秒以上間を空けずに20往復程度のやり取りをした。2分間の英会話テストのクラス平均wpmは123.1だった。 | |
研究発表⑧ | |
「ティーム・ティーチングにおける教師の発話の特徴―T2に焦点を当てたティーチャー・トークの分析―」 | |
野﨑 美帆(田中学園立命館慶祥小学校)・内野 駿介(北海道教育大学) | |
本研究は、外国人教師と日本人教師がティーム・ティーチングを行う小学校英語の環境下で、日本人教師である私(第1発表者)の発話の実態を明らかにするための実践研究である。効果的なインプットの与え方や児童の発話の引き出し方を総合的に捉える枠組みとして、MERRIER Approachと小学校外国語活動版FORCEを土台とした新たな発話分析の枠組みを開発し、分析に用いた。私の勤務校において、週4回設定されている小学1年生の英語の授業のうち、毎週1回分を録画し、T2である私の発話を分析した。発表 では、児童の発話を促し、理解を促進するために教師が普段から取り入れている工夫や 発話傾向、授業構成の特徴などを報告する。 | |
研究発表⑨ | |
「スピーチタスクの繰り返し活動におけるルーブリック活用の効果―セルフリフレクションとピアフィードバックの効果に焦点を当てて」 | |
濱田 裕介(希望学園北嶺中高等学校) | |
本研究では、中学2年生を対象に、1分間スピーチの繰り返し活動を、総合的なスピーキング力を高めるためにどのように効果的に実践できるかを検討した。具体的には、スピーチ間にルーブリック(RB)を用いてセルフリフレクション(SF)を行った群、同じくRBを用いてピアフィードバック(PF)を行った群、そして繰り返しのみを行った群の3群を設定した。これらのスピーチを、教員によるRBを用いた評価を基に比較した。研究デザインはプリポスト方式を採用し、事前スピーチがスピーチの繰り返しと短期的な介入を通じてどのように変化したかを分析した。教育現場でスピーチタスクの繰り返しを効果的に実践するための考察と示唆を提示する。 | |
13:15-13:45 | 研究発表・実践報告⑩〜⑫ |
研究発表⑩ | |
「生徒の多様な学びを支える英語授業のデザイン―個別最適化と協働を両立させる試み―」 | |
安井 広大(北海道長万部町立長万部中学校) | |
CEFRでは中学校卒業時にA1レベル(英検3級以上)の英語力が求められるが、令和5年度「英語教育実施状況調査」によると北海道の達成率は約18%にとどまっている。勤務校では学力や学習意欲、発達段階に差があり、不登校や合理的配慮を要する生徒も在籍している。そのため多様性を尊重した授業が必要である。本実践では3年間を見据えたグループ別自由進度学習を基盤とし、教師による個別最適な指導・評価、ICTを活用したユニバーサルデザイン教材を導入して課題の解決を図った。本発表ではその具体的内容、学力の変化、アンケート結果、今後の展望を報告する。 | |
研究発表⑪ | |
「小学校外国語科検定教科書付属絵辞書のイラストは適切に意味を伝達しているか?―動詞・形容詞調査の正答率と解答のばらつきの検討―」 | |
佐藤 選(東京学芸大学)・内野 駿介(北海道教育大学) | |
小学校外国語科検定教科書付属絵辞書に収録されているイラストの意味伝達力について検討するため、36の形容詞と37の動詞(句)を対象に、そのイラストが表す語句を想起する課題を実施した。大学生を対象に、各語句につき3~4種類のイラストを用い、動詞110問、形容詞111問を出題した。分析の結果、動詞と比べて形容詞の方が「わからない」という解答が多いこと、正答率が低いイラストほど解答のばらつきが大きい傾向があるが、動詞にのみ、正答率が低く解答のばらつきも小さい語句があることが明らかになった。以上から、イラストの意味伝達力にはばらつきがあり、授業におけるイラスト活用に際しては注意を要する場合があることが示唆された。 | |
研究発表⑫ | |
「The Effect of Retelling on Speaking English by Junior High School Students」 | |
小尾 詩織(北海道教育大学教職大学院)・笠原 究(北海道教育大学) | |
This study investigates the effects of retelling activities on the English speaking ability of junior high school students. A total of 42 students participated by reading a short passage and retelling its content within two minutes. The analysis focused on their word count, speaking time, coverage of idea units (IUs), and original opinions. Results showed that, on average, students reproduced about half of the IUs and spoke 84 words in 92 seconds, revealing individual differences in speaking performance. Questionnaire responses indicated that 83.9% felt the activity improved their comprehension, and 66.1% enjoyed it, suggesting positive motivation and reduced reluctance to speak. However, direct improvement in speaking ability was limited, as some students only expressed their opinions without fully retelling the text. Retelling is considered a valuable instructional strategy for novice learners because it provides structured content to speak about. | |
13:50-14:20 | 研究発表・実践報告⑬〜⑮ |
研究発表⑬ | |
「Developing Presentation Skills through Reflection: A Practical Report from a Japanese Junior High School」 | |
折井 麻美子(早稲田大学)・肥田 和樹(秀明大学)・千葉 菜穂子(Kent State University) | |
This study examines how structured self-reflection and collaborative learning foster junior high school students’ presentation skills. Although the Course of Study promotes presentation instruction, classroom implementation remains limited and qualitatively insufficient due to time constraints, teacher uncertainty, and lack of established methods (Adachi, 2023; British Council, 2020; Hida, 2021). While previous research supports reflective and collaborative approaches in university education (Li, 2018; Makino, 2019), studies at the junior high level are scarce (Chong & Reinders, 2022). In this study, 70 third-year students participated in 12 lessons to improve delivery, pronunciation, and idea development. With endangered species as the topic, instruction supported clearer organization and more engaging communication. Through targeted instruction and reflection, students assessed strategic choices and engaged with resentations more thoughtfully. Findings highlight the potential of reflective learning to build expressive, confident, autonomous learners at the secondary level. | |
研究発表⑭ | |
「小学生の文法意識―項目分析の結果より―」 | |
澀谷 順子(青山学院大学) | |
本研究の目的は、小学生が外国語(英語)の授業におけるコミュニケーション活動を通して育む文法意識の特徴を明らかにすることである。小学生の文法意識についての先行研究としては、浦田他(2014)、物井他(2015)、内野(2019、2021)、江口(2020、2021)、アレン玉井(2023)、Shibuya (2023)、澀谷(2024)があげられる。本研究では、Allen-Tamai & Shibuyaのテストを用い、北陸地方X県の児童(5年生153名、6年生147名)および東京都の児童(5年生189名、6年生183名)を対象にテストを実施した。そして各項目のIF値、およびrpbi値に基づいて項目分析を行い、児童の各項目に対する反応を検討し、各項目の妥当性を明らかにした。 | |
研究発表⑮ | |
「Effects of Cumulative and Random-Selection Tests on JHS Students’ Vocabulary Learning」 | |
鎌田 亮祐(北海道教育大学附属旭川中学校)・笠原 究(北海道教育大学) | |
英単語の意味と綴りを結び付けるには、綴りから意味を思い出す想起練習を繰り返す必要がある。特定の語句を一度だけ想起させる従来型のテストでは、繰り返しが確保できない。このため、以前出題した項目も範囲に含めてテストする方法(累積テスト:CT)や、あらかじめすべての単語を出題範囲とし、その中から繰り返しランダムに出題する方法(ランダム選択テスト:RST)が考案され、大学生を対象にその有効性が確認されてきた。しかしCTやRSTは初級学習者には負荷が大きく、意欲をそぐ可能性がある。本研究では中学生を対象に、上記3つのテストをそれぞれ実施したが、有意差は確認できなかった。 | |
14:40-15:10 | 研究発表・実践報告⑯〜⑱ |
研究発表⑯ | |
「中学校1年生の英語授業におけるピア・リテリングの実態個別調査」 | |
西林 慶武(北海道登別明日中等教育学校) | |
本研究は、公立中学校1学年の英語授業中に行ったリテリングについて、複数の特定生徒に注目して調査したものである。リテリングとは、「本文の内容を自分の言葉で表現する活動で、言語表現のインテイク活動やアウトプット活動として利用されるもの」として、中学校・高等学校の授業で注目されている。しかし、学習者がリテリング中に実際にどのように活動しているのかを、授業者が個別に詳細に観察することは困難である。そこで本研究では授業の様子を撮影し、学習者のリテリング音声を収集・分析した。これにより、リテリングの実態や教育的効果を明らかにし、学習者同士でリテリングすることによる相互作用について検討した。 | |
研究発表⑰ | |
「中学校英語授業における教師の発話機能分析―トランスランゲージングの視点から―」 | |
酒井 優子(東海大学)・村田 琴美(札幌市立丘珠中学校)・志村 昭暢(北海道教育大学) | |
本研究は、中学校英語授業における教師の発話機能をトランスランゲージングの視点から検討する。教師がL1とL2を行き来する発話は、学習者の理解促進や参加支援に重要な役割を果たす。トランスランゲージングは学習者の全言語資源を活用する枠組みであり、教師発話の分析を通して、意味構築やアイデンティティ承認、教育的公平性への寄与を明らかにできる。従来は学習者実践やEMI/CLILに焦点が当てられてきたが、中学校段階での体系的研究は不足している。本研究は教師の言語選択が理解、相互行為、情意的支援にどう結びつくかを明らかにし、授業実践への示唆を提供することを目的とする。 | |
研究発表⑱ | |
「長期的な字幕使用がリスニング力に与える阻害効果」 | |
金山 幸平(北海道教育大学) | |
本研究では、大学1年生(字幕群と非字幕群)を対象に長期に渡るアニメの視聴がリスニング力向上に与える影響について調査した。学習セッション(前半: Weeks 2 to 7, 後半: Weeks 9 to 14)では、毎週アニメのエピソードを1話(2回ずつ)視聴した。両群間の違いは、非字幕群は2回目の視聴は字幕なしで視聴したことである。エピソード視聴後に毎回内容理解小テストを実施した結果、全体的にやや字幕群の方の成績が高くなった。しかし、テストセッション(Weeks 8, 15)で、1話につき1回のみ(字幕付き、または字幕なしで)視聴した場合、非字幕群の成績が字幕群を有意に上回った。 | |
14:45-15:15 | 研究発表・実践報告⑲〜㉑ |
研究発表⑲ | |
「ミッションシートを活用した自主的学習の促進:3観点を評価するための仕組みの設計」 | |
大脇 裕也(大東市立北条中学校) | |
近年、主体的学習の態度の重要性が教育現場で指摘される一方、日常授業における多面的な評価方法は十分に整備されていない。本研究では、著者オリジナルのミッションシートを用いて、生徒が課題を見通し・実行・振り返る授業実践を行った。その効果を三観点(知識・技能/思考・判断・表現/主体的学習態度)で評価できる仕組みについても設計し、授業分析を通じて有効性を確認した。本発表では、授業動画を用いながら、自主的学習促進と多面的評価の2年半にわたる実践の成果を紹介する。なお、本研究はJSPS科研費JP25H00105の助成を受けたものである。 | |
研究発表⑳ | |
「中学校におけるタスクを志向した授業におけるリフレクションの効果―同じ指導案の授業がどのように改善されるのか―」 | |
村田 琴美(札幌市立丘珠中学校)・志村 昭暢(北海道教育大学) | |
本研究は、中学校英語授業におけるタスク志向型実践の改善過程を、リフレクションの効果から検証することを目的とする。同一教員が同一指導案に基づき3クラスで実施した授業を対象とし、COLTによる授業分析およびTBLTの枠組みに基づく研究者によるリフレクションを行った。その結果、授業前半では言語形式の定着を志向した活動が中心であったが、リフレクションを通じて後半には学習者の主体的な発話や相互作用を促すタスクが増加し、授業のコミュニケーション志向が高まる傾向が確認された。本発表では、同一の授業実践がリフレクションを契機としてどのように改善されるのかを明らかにし、タスク志向型授業におけるリフレクションの意義とその可能性について論じる。 | |
研究発表㉑ | |
「The Effects of Peer and Generative AI Feedback on Learners’ Motivation and Engagement in English Storytelling Activities」 | |
松橋 晃輔(和寒町立和寒中学校)・笠原 究(北海道教育大学) | |
This study explores the effects of peer feedback (P-FB) and AI-generated feedback (AI-FB) on learners’ motivation and engagement (ENG) in English learning. Nineteen junior high school students participated in two storytelling (ST) activities using four-frame comic strips. A pre-questionnaire measured motivation through Self-Determination Theory (SDT: autonomy, competence, relatedness) and ENG across four dimensions (behavioral, emotional, cognitive, social). In the first activity, students created scripts and revised them after P-FB; in the second, they wrote new scripts and revised them with AI-FB. The same questionnaire was given after each activity, and data were analyzed with Wilcoxon signed-rank tests. Results showed that P-FB improved only relatedness, with no significant ENG changes. By contrast, AI-FB significantly enhanced all ENG dimensions, though no SDT needs changed. These findings suggest that generative AI tools such as ChatGPT can strengthen learners’ motivation and engagement, particularly in small classroom settings. | |
15:45-15:50 | 移動・休憩 |
15:50-17:20 | 特別公演 |
「英語定型表現の指導:コーパスと生成AIを活用して」 | |
講師 中田 達也 氏(立教大学異文化コミュニケーション学部・異文化コミュニケーション研究科教授) | 17:20-17:30 | 講演質疑応答 |
17:30-17:40 | 閉会 |
19:00-21:00 | 懇親会 |